EC事業者が陥る「在庫と資金」のジレンマ
EC・ネットショップ事業者も、ファクタリングを活用すれば資金繰りを改善できます。ファクタリングの基本については「ファクタリングとは?初心者向け完全ガイド」をご覧ください。
EC(電子商取引)・ネットショップ事業は、店舗家賃がかからず、少人数で運営できるため、参入障壁の低いビジネスモデルです。しかし、事業を成長させる段階で多くの事業者が直面するのが「在庫と資金のジレンマ」です。
売上を伸ばすには在庫が必要 → 在庫を仕入れるには資金が必要 → 資金は売上の入金を待たないと手に入らない
このサイクルが、EC事業者の成長を妨げる最大のボトルネックになります。
プラットフォームの入金サイクルが長い
EC事業者の多くは、Amazon・楽天市場・Yahoo!ショッピングなどのプラットフォームに出店しています。これらのプラットフォームの入金サイクルは、必ずしも短くありません。
| プラットフォーム | 入金サイクル(目安) |
|---|---|
| Amazon | 2週間ごと(設定により変更可能) |
| 楽天市場 | 月末締め翌月末払い or 翌々月10日払い |
| Yahoo!ショッピング | 月末締め翌月末払い |
| 自社ECサイト(カード決済) | 決済代行会社により15日〜60日 |
特に楽天市場やYahoo!ショッピングでは、売上が発生してから入金されるまでに30日〜40日かかるのが一般的です。
仕入れは「先払い」が基本
海外からの商品仕入れ(OEM含む)では、注文時に代金の50%〜100%を先払いするのが一般的です。国内の仕入れでも、新規取引先には前払いを求められることが多いです。
具体例:
- 中国からの商品仕入れ: 注文時に50%、出荷時に50%を支払い
- 国内仕入れ: 月末締め翌月末払い or 前払い
- 商品到着後、検品・出品・販売・入金まで: さらに1ヶ月〜2ヶ月
仕入れ代金を支払ってから売上が入金されるまで、2ヶ月〜3ヶ月のタイムラグが発生するのは珍しくありません。
在庫リスク
仕入れた商品が想定通りに売れない場合、在庫として資金が「凍結」されます。EC事業では季節商品やトレンド商品を扱うことが多く、売れ残りリスクは常につきまといます。不良在庫は値引き処分するか廃棄するしかなく、資金の回収が困難になります。
広告費の先行投資
Amazon広告、楽天市場の広告枠、Google広告、SNS広告など、EC事業では集客のための広告費が継続的に発生します。広告費は「先に支出して、後から売上として回収する」投資であり、資金繰りを圧迫する要因の一つです。
EC事業者が使えるファクタリングの種類
EC事業者の場合、売上の回収方法によって利用できるファクタリングの種類が異なります。
タイプ1: BtoB取引の売掛金ファクタリング
卸売り・法人への一括販売・OEM供給など、法人相手の取引がある場合に利用できます。
- 対象: 法人への請求書(売掛金)
- 手数料: 2社間8%〜18%、3社間1%〜9%
- 入金: 最短即日〜数日
タイプ2: クレジットカード債権ファクタリング
自社ECサイトでのクレジットカード決済の売上を、入金日前に現金化するサービスです。
- 対象: クレジットカード決済の売上
- 手数料: 3%〜10%程度
- 入金: 最短翌日〜数日
タイプ3: プラットフォーム売上債権の早期現金化
一部のファクタリング会社やフィンテック企業が、Amazon・楽天市場の売上を担保にした早期入金サービスを提供しています。
- Amazon: Amazon レンディング(Amazon独自の融資プログラム)、サードパーティの売上債権ファクタリング
- 楽天市場: 楽天カードの早期入金サービスなど
EC事業者でのファクタリング活用シナリオ
シナリオ1: 繁忙期前の仕入れ資金確保
年末商戦(11月〜12月)やセール時期に向けて、大量の在庫を仕入れる必要がある場合。通常月の売掛金をファクタリングで現金化して、繁忙期用の仕入れ資金に充てます。
具体例:
- 10月: 年末商戦用の商品を1,000万円分仕入れ
- 10月時点の売掛金(9月分の売上): 800万円
- 800万円をファクタリングで現金化(手数料10%の場合、720万円入金)
- 不足分280万円は自己資金または他の調達方法で補完
シナリオ2: 海外仕入れの代金支払い
中国からの仕入れで、注文時に500万円の前払いが必要な場合。楽天市場の先月分の売上(入金は来月末)をファクタリングで早期現金化して、仕入れ代金に充てます。
シナリオ3: 新商品の立ち上げ資金
新しい商品ラインの立ち上げに際して、初回仕入れ・商品撮影・LP制作・広告費などの初期投資が必要な場合。既存商品の売掛金を活用して資金を確保します。
シナリオ4: 広告費の増額対応
広告のROASが好調で、広告費を一時的に増額して売上を伸ばしたい場合。売掛金をファクタリングで現金化して広告費に投下し、売上の拡大を図ります。
シナリオ5: 不良在庫の処分とリカバリー
不良在庫を値引き処分した結果、一時的にキャッシュフローが悪化した場合。他の売れ筋商品の売掛金をファクタリングで現金化して、次の仕入れ資金を確保します。
EC事業者がファクタリングを利用する際の注意点
在庫回転率を改善するのが最優先
ファクタリングは資金繰りの「症状」を緩和する手段ですが、在庫回転率が低いという「原因」を解決するものではありません。売れ筋分析、在庫管理の効率化、仕入れロットの最適化など、在庫回転率の改善に取り組むことが最も重要です。
手数料を商品の利益率と照らし合わせる
EC事業の商品粗利率は30%〜60%程度が一般的ですが、プラットフォーム手数料、広告費、送料を差し引いた純利益率は5%〜15%程度のケースが多いです。ファクタリングの手数料が純利益率を上回ると赤字になるため、商品ごとの利益構造を把握した上で利用を判断しましょう。
プラットフォームの規約を確認する
一部のプラットフォームでは、売上債権の譲渡に関する規約を設けている場合があります。ファクタリングの利用がプラットフォームの規約に抵触しないか、事前に確認しておきましょう。
BtoC中心の場合は使えるファクタリングが限られる
EC事業はBtoC(個人消費者への販売)が中心のため、一般的な売掛金ファクタリング(法人への請求書が必要)が使えない場合があります。クレジットカード債権ファクタリングやプラットフォームの早期入金サービスを検討しましょう。
EC事業者の資金繰り改善に向けた他の施策
プラットフォームの入金サイクルを短縮する
Amazonの場合、入金サイクルを毎日や3日に1回に設定変更できるプランがあります。手数料が若干上がる場合もありますが、資金繰りの安定化に直結します。
クレジットカードの活用
仕入れ代金を事業用クレジットカードで支払うことで、支払いを25日〜55日先送りにできます。これはファクタリングのコストをかけずに資金繰りを改善する方法です。
小ロット仕入れへの切り替え
大量仕入れでの単価引き下げよりも、小ロット仕入れで在庫リスクと資金負担を抑える方が、資金繰りの観点では合理的な場合があります。特に需要が読みにくい新商品では、まず小ロットでテスト販売し、売れ行きを確認してから追加仕入れする方法が有効です。
予約販売・クラウドファンディングの活用
商品の販売前に注文を受け付ける「予約販売」や、Makuake・CAMPFIREなどでの先行販売は、在庫リスクなしで仕入れ資金を確保できる方法です。
まとめ
EC・ネットショップ事業は、「在庫の仕入れ先払い × 売上の後払い入金 × 広告費の先行投資」という三重の資金繰り圧迫構造を持っています。経済産業省もEC事業者の事業環境整備に取り組んでいます。ファクタリングは、売掛金やカード債権を早期に現金化して、仕入れ・広告費・運転資金を確保するための有効な手段です。手数料の相場は「ファクタリング手数料の相場は?2社間・3社間の違いを徹底解説」をご覧ください。資金繰り全般の改善策は「中小企業の資金繰り改善5つの方法|明日からできる対策」も参考になります。個人事業主の方は「個人事業主・フリーランスでもファクタリングは使える?条件と活用法」もあわせてご確認ください。
ただし、ファクタリングだけに頼るのではなく、在庫回転率の改善、入金サイクルの短縮、仕入れロットの最適化といった根本的な対策と組み合わせることで、持続可能な資金繰りの仕組みを構築しましょう。EC事業者も利用できるIT導入補助金などの支援策も併せてご検討ください。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、具体的な手数料やサービス内容は各ファクタリング会社にお問い合わせください。
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